One Touch Freak

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トオルちゃん 002

階段を下りて、東口のロータリーを横目に横断歩道を渡り、しばらく行ったところにある路地裏のビルにはエレベーター等無く、トオルちゃんは階段で二階まで上がり目の前にある店の戸を開けた。

『うぃす』。

『おお、トオルちゃん、久しぶり』。
ビニールに包まれたいかがわしい本やDVDがところ狭しと並べられた店のカウンターには、ひげづらをした店主がどっしりと構えている。彼にとって古びたビルの2階にあるこの店は、職場であり、寝床であり、要するに現在の彼のすべてである。

『やっさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、イイすかねぇ?』。

『なになに?』。
ひげづらの店主の目が妙に輝きだした。

『あの、パンプキンってデリヘルなんですけど、知ってます?』。

『ああ、知ってるよ。何?女の子でも引き抜かれたの?』。

『いやぁ、そういうワケじゃないんですけど、、、』。

『うーん、、、あそこは、何か目立たないようにこっそりやってる感じだよねぇ。たまぁにマイナー雑誌なんかも使ってるけど、基本的に宣伝は夕刊の中刷り三行広告が中心でさぁ、まあ、間違いなく女の子に本番やらせてると思うよ』。

『へぇ、、、』。

『トオルちゃんとこも三行広告出してみたら?最近はけっこう食いつきイイみたいよ』。

『いやぁ、ウチはいつもの通りでイイですよ』。

『ああ、そう。それにしてもさぁ、ルナちゃん最近ヤバいでしょ?』。

『ああ、はい、おかげさまで』。

『ネットでもさぁ、イイ内容の書き込みしか見当たらないからねぇ』。

『えっ、何すかそれ?』。


『何すかそれってさぁ、、、店の感想なんかを書き込む掲示板ってけっこうたくさんあるんだよ。まあサクラも多いんだけどね』。
そう言いつつ店主はノートPCのボタンをたたいて、彼の言うその掲示板サイトを見せてくれた。

『へぇ、こんなこと書き込みする人ってけっこういるんですねぇ、、、。今日もたっぷりとろけました、ああ、もうルナ様無しでは生きていけない、、、って何だよコレ』。

『ねぇ、ルナちゃん大人気でしょ。寂しいヤローどもがさぁ、こうやって孤独を紛らせてるわけよ。みんなトオルちゃんのお客様だぜぇ』。

『あ、そうですね。感謝しないといけないなぁ』。

『そうそう』。
ひげづらの店主は目を閉じて深くうなづいている。

『ちょっとこのノートPC使わせてもらってもイイですか?』。

『ああ、イイよ』。
トオルちゃんはひげづら店主のPCでパンプキンのHPを検索しはじめた。

『お、あったあった。へぇ、、、五反田~品川ねぇ』。
一通り店のHPのすみずみをチェックしているのかと思いきや、一方では慣れた手つきで店の電話番号を携帯に登録している。

『やっさん、ここにはまだお世話になってないんですか?』。

『そこはまだ無いねぇ。それよりさぁ、川崎に面白いところがあるんだけどさぁ、、、』。

『ああ、それはまた今度、、、。あ、もうこんな時間か、じゃ、また来ますんで。今日はありがとうございました』。
根っからの夜遊び好きな店主がその手の話をしはじめると停まらなくなる。それをを十二分に理解しているトオルちゃんは、体よくその場を切り上げ店の外へ出た。

『ええっと、、、』。
登録したばかりのパンプキンの電話番号を呼び出し電話をかけてみるが、まだ時間が早いからかつながらない。

『出ませんか、、、。まあ、まだ5時だしね』。
であれば電話に出るまで何度もかけてみるだけのこと。この後、蒲田駅でチサトをピックアップしてからでも遅くはない。携帯をポケットに閉まったトオルちゃんは、その足でいつもデリヘルのオーナーに使わせてもらっている車がある駐車場へ向かった。この車の持ち主との関係は、ある日フラっと立ち寄ったピンサロで偶然にもその店の従業員として働いていた高校時代のサッカー部の後輩・池上ワタルに再開し、たまたま彼に紹介されたのがきっかけで今日に至る。

ちょうど、大学を出て四年近く働いた会計事務所の所長先生が、やっかいな事情を抱えて事務所をたたんだ後、引き続き自宅で仕事を続ける所長先生を手伝いながら、先生の顧問先の工場でアルバイトをしている時だった。

不景気のあおりで工場の資金繰りは日に日に悪化し、従業員の給与は大幅にカットされ、みるみる仕事がなくなっていく。急場をしのぐために助けてもらおうと思ってはじめたアルバイトだったが、いつしか何か良いアイディアはないかと相談されるようになり、ちょうどそんな矢先に仕事を任せられる人間を探している人がいると紹介されたのがこのデリヘルのオーナーだった。正確にはオーナーは店を買ってくれる人を探していた様だが、ワタルが事情を説明して、良い買主が見つかるまで、毎日売上の30%を納めるという条件で店を任せてもらっている。おかげでいまのところ月の半分以上の収入をこのデリヘルの仕事で確保できている上に、工場で働く人間も副収入源を確立でき、オーナー様々、ワタル様々といったところなのだが、正直このオーナーが見るからに普通の人ではなく、ワタルは信用できる人だと繰り返し薦めてくれてはいるものの、何だかいまだに気が気でない。

『ああ、ねみぃ』。
アルミ缶入りのアイスコーヒーとブラックブラックガムを買うためにコンビニに寄ると、あっという間に時間は5時半をまわっていた。とはいえ最近慢性化している睡眠不足をわずかにでも緩和させるのにこの両者は欠かせず、結局いつもの通り小走りで駐車場にまで向かうことになる。

『おいしょっと』。
数時間前までいたこの場所にまた戻ってきてしまった。シートの位置を調整してエンジンをかければ今日もまた長い長い夜がはじまる。
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  1. 2014/12/26(金) 21:54:48|
  2. ◆トオルちゃん
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